竹芝桟橋から乗って、着けばもう「東京の離島」。飛行機みたいにシートベルトで縛られない、デッキに出られる、海が見える。2歳が退屈しない乗り物旅です。
「船で行く旅」と聞いて、まず思い浮かぶのが伊豆大島。羽田でも成田でもなく、集合は浜松町の竹芝桟橋です。ターミナルはこぢんまりしていて、待合室からもう船が見える。この「これから乗るものが目の前にある」感じが、子どもにはたまらないらしく、出発前から目が丸くなります。
高速ジェット船なら1時間45分。水面から浮き上がって走るので揺れが少なく、あっという間。ゆっくり行くなら大型客船で、夜に東京を出て朝に島に着く「船中泊」という手もあります。どちらにしても、着いた瞬間に椿と海と火山のにおいがして、東京から2時間の場所とは思えません。
島は車で一周1時間ちょっと。黒い砂浜、バウムクーヘンみたいな地層、火口湖がそのまま港になった波浮(はぶ)。動物園は入園無料で、ゾウがいます。2歳の「はじめての船旅」に、これくらいの距離感がちょうどいい。
船旅の最大のリスクは欠航。冬の伊豆諸島航路は北西の季節風で揺れやすく、欠航率も上がります。その点夏から初秋は海がおだやかで、就航率が高いのがいちばんの理由です。加えて夏期は大型客船の昼行便が増発され、明るいうちにデッキで海を眺めながら渡れます。
ねらい目は8月下旬〜9月。お盆の混雑と船の満席が抜け、宿も取りやすくなるうえ、海水浴場はまだ開いていて水温も高いまま。夜は空気が澄んで星がよく見えます。ただし台風シーズンと重なるので、予備日を1日みておくか、キャンセル規定の緩い宿を選ぶのがコツです。
とにかく移動をラクにしたい家族向け。朝いちの高速ジェット船に乗れば、お昼前には島でごはんを食べています。島は一周46kmと小さいので、レンタカーがあれば2泊で見どころをひととおり回れます。「火山の島」という個性がはっきりしていて、大人も面白い。
浜松町・竹芝桟橋発。時速約80kmで水面から浮き上がって走る「セブンアイランド」シリーズで、揺れが少なく速い。窓の外はどんどん東京湾の景色が変わり、途中で観音崎や房総半島も見えます。夏は1日2〜3便前後(時期で変動)。
港のまわりに食堂と寿司屋が並びます。名物のべっこう寿司は、白身魚を青唐辛子入りの醤油に漬けたもの。飴色に光るのでこの名前。辛味があるので2歳には別に卵やたまごスープを頼むのが無難ですが、明日葉の天ぷらや島のり味噌汁はとりわけできます。

元町港から歩ける距離にある、火山をテーマにした博物館。1986年の噴火の記録映像や、地下の様子を再現した空間、揺れを体感できる装置などがあります。何ができる?=噴火の映像を見る、火山弾など本物の石にさわる、大きな模型を上から眺める。
元町港のすぐ横、海に面した水着着用の露天風呂。混浴なので家族3人で一緒に入れます。正面は西向きで、晴れた日は湯船から夕日が海に落ちるところが見える。何ができる?=湯につかりながら夕日、浅い場所でぱしゃぱしゃ。
島の中央にそびえる活火山。元町から山頂口の御神火(ごじんか)茶屋まで車で約25分、駐車場から降りればもうカルデラの中。目の前に黒い溶岩の海が広がり、地球が別の顔をしています。何ができる?=展望台から火口丘を眺める、遊歩道を少し歩く、山頂の売店で明日葉ソフト。

三原山の火口一周道路沿いにある、噴火でできた溶岩の塊。角度によって本当に怪獣が吠えているように見えます。何ができる?=「ゴジラだ!」と指さして写真を撮る、それだけ。でもこれが妙に盛り上がる。

島の南西、道路を通すために山を削ったところ、何万年ぶんもの噴火の地層が縞になって現れた——という場所。長さ約600m、高さ20m超。あまりにバウムクーヘンなので、島の人もそう呼びます。何ができる?=車を停めて見上げる、記念写真。三原山から車で約20分。
島の宿は夕食が早め(18時前後)のところが多く、子連れにはむしろ好都合。食後は外に出て星空を。街灯が少ないので、天の川が見える夜もあります。
島の北東、都立大島公園の中にある入園無料の動物園。ゾウ、レッサーパンダ、ワオキツネザル、フラミンゴ、カピバラなどがいて、無料とは思えない規模。同じ公園内には世界の椿を集めた椿園と、木陰の散歩道があります。何ができる?=ゾウを間近で見る、サル山をのぞく、木陰をベビーカーで散歩。
レンタカーを返して港へ。出航の30分前には着いておきたいところ。帰りの船でも、遠ざかる三原山を窓から見送れます。
💰 予算めやす:家族3人(おとな2+2歳)で10〜13万円。船は大型客船に替えると往復で1〜2万円ほど下がります。夏の繁忙期は船も宿も値上がり・満席になりやすく、お盆を外した8月下旬〜9月が価格・混雑ともに有利。
「船で行く旅」を字義どおり味わうならこちら。夜、竹芝から大型客船さるびあ丸に乗り込み、船室で眠って、目が覚めたら島に着いている。デッキに出れば東京の夜景が流れていき、そのまま暗い海へ。2歳にとっては、遊園地よりも強い体験になるかもしれません。
浜松町駅から歩いて約7分、ゆりかもめ竹芝駅からすぐ。乗船が始まるとタラップを上がって船内へ。出港の瞬間、汽笛が鳴って岸が離れていくところは、ぜひデッキで。しばらくするとレインボーブリッジの真下をくぐります。
元町港のすぐそばにある屋内の温泉施設。早朝着の船に合わせて開くことが多く、上陸したてで宿に入れない時間帯の逃げ場になります。何ができる?=湯につかる、休憩室で仮眠、朝ごはん。
島の南端。もとは火口の跡にできた湖で、それを海とつないで港にした——という成り立ちからして面白い場所です。丸くくぼんだ入り江に漁船が並び、斜面に家がびっしり。元町から車で約35分。まずは「波浮の港見晴台」から全景を見下ろしてから、坂を下りて港町へ。
波浮の高台には、明治期の網元の家「旧甚の丸邸」が公開されています(無料)。太い梁、囲炉裏、畳の広間。元町側の郷土資料館にも、島の暮らしの道具や古い民家が保存されています。何ができる?=畳に上がってひと休み、昔の道具を見る。

島の東海岸、海の上に筆の先のようにぽつんと立つ岩。100万年以上前の古い火山の芯(火道)だけが波に削り残された、という成り立ち。展望スペースから見下ろします。波浮から車で約10分。
帰りは高速ジェット船で1時間45分。行きは8時間、帰りは2時間——という非対称も、この旅らしい体験です。
💰 予算めやす:家族3人で11〜14万円。個室のグレードで振れ幅が大きく、2等和室にすればぐっと下がりますが、2歳連れには個室をおすすめします。船中泊で宿1泊ぶんを節約できるので、実質の差は思ったより小さい。
名所を回るのはやめて、船に乗ることと海に入ることだけを目的にする過ごし方。伊豆大島の砂は火山の島らしく黒いので、白い砂浜に慣れた目にはそれだけで非日常です。予定を入れないぶん、天気にも子どもの機嫌にも振り回されません。
高速船でも大型客船の昼行便でもOK。荷物を置いたら、あとはもう海。着いた日は「島に来た」ことだけを味わいます。
元町は島の西岸なので、正面に夕日が沈みます。晴れた日は水平線の向こうに伊豆半島、その上に富士山が浮かぶことも。何ができる?=堤防ぞいを歩く、船の出入りを眺める、夕日を見る。
元町港から歩ける海水浴場。夏期は監視員が入り、シャワーや更衣室、屋外プール(時期により)も整います。砂は黒く、日なたではかなり熱くなるのでビーチサンダル必須。何ができる?=波打ちぎわで水遊び、黒い砂で山づくり、貝さがし。
13〜15時は部屋で昼寝。起きたら元町の商店へ。牛乳煎餅、椿油、明日葉のお菓子など、島の産品を見て回るだけでも楽しい。カフェで明日葉ソフトを。
海に面した水着着用の露天風呂。家族3人で同じ湯船に入れて、正面には夕日。何ができる?=夕日を見ながら湯につかる、ぬるい場所でぱしゃぱしゃ。
入園無料の動物園。ゾウやレッサーパンダがいて、木陰の散歩道もあります。バスかタクシーで元町から約30分。時間が中途半端なら無理せず、もう一度海に行くのでもまったく構いません。
船が出るまでの時間は、港のベンチで海を見て過ごすのがこの旅らしい終わり方。
💰 予算めやす:レンタカーを使わないぶんいちばん安く、家族3人で9〜12万円。船・宿・現地の3つとも時期で大きく変動します(お盆と週末が高い)。島内は路線バスの本数が少ないので、動く日はタクシーを前提に見ておくと安心です。
高速船は速くて快適ですが、正直「速い乗り物」で終わります。夜にレインボーブリッジをくぐって、船室で眠って、朝の海に島が浮かんでいる——この一連は、2歳にとっても大人にとっても一生ものの記憶になります。船酔いや夜泣きが不安なら「A・高速船で王道2泊」、とにかく休みたいなら「C・海と温泉だけ」。時期はお盆明けの8月下旬〜9月が、海がおだやかで混雑も抜けていて狙い目です。台風だけは読めないので、予備日を1日みておくと気がラクになります。