羽田から1時間40分で、地面から湯気の立つ街に着きます。青い池、お猿の山、海のいきもの、そして高原の紅葉。歩く距離が短くて、温泉であたたまって終われる——2歳連れにちょうどいい秋の旅先です。
大分空港からバスに揺られて坂を下りていくと、街のあちこちから白い煙が立ちのぼっているのが見えてきます。工場でも火事でもなくて、全部お湯の湯気。別府は市街地のまんなかから温泉が湧いている、日本でもかなり変わった街です。2歳の子は窓に貼りついて「けむり!」と言い続けるはずです。
この土地のいいところは、見どころが「小さくて濃い」こと。コバルトブルーの池を見て、お猿の群れに会って、水族館でセイウチに笑って——それぞれ1〜2時間で終わります。詰め込まなくても一日が満ちるので、13時からのお昼寝もちゃんと守れる。夕方は貸切風呂であたたまって、豊後牛と関あじで大人はごきげん。
そして秋。9月の残暑が抜けると、大分はいちばんいい季節に入ります。朝の由布院は霧に沈み、くじゅうの高原は10月の下旬から山肌が赤く染まりはじめる。温泉が「気持ちいい」に変わる、その最初の週です。
大分の秋は10月がいちばん当たりです。理由は3つ。①残暑が抜けて温泉が気持ちよくなる——夏の別府は正直、湯けむりの街を歩くだけで汗だくですが、10月は最高気温23〜25℃前後で散策が快適。②紅葉が県内でいちばん早く始まるのがくじゅう・九重エリア(標高1,000m前後で例年10月中旬〜11月上旬めやす)。耶馬渓は11月中旬が本番なので、10月下旬なら「高原は色づき、里はまだ緑」の両取りができます。③朝霧の由布院は、冷え込みが出はじめる秋から冬に見られる名物。
ひとつだけ注意は9月は台風シーズンのピークということ。予約を1か月前後に置くなら、10月中旬〜下旬を狙うのがいちばん安心です。食べもののほうも、かぼすが旬の終盤(8〜10月)、関あじ・関さばに脂がのりはじめ、豊後牛がおいしい時期に入ります。
別府は「小さい範囲に強いコンテンツが詰まっている」街です。地獄めぐり、高崎山のニホンザル、うみたまご(水族館)——どれも車で20分以内。ひとつ2時間で終わるので、午前に1か所、お昼寝をはさんで夕方に温泉、というリズムがきれいに組めます。2歳連れの初大分なら、まずここ。
羽田から大分空港まで約1時間40分。空港からは空港特急バスで別府まで約50分(鉄輪までは乗り継ぎか車で約15分)。到着日は宿に荷物を置いて、湯けむりの路地を散歩するだけで十分です。

温泉の噴気で野菜や卵、海鮮を自分で蒸して食べる施設。材料を買って、釜に入れて、10〜20分待つだけ。何ができる?=ざるに食材を並べる、フタが開いた瞬間の湯気にびっくりする、熱々のとうもろこしをかじる。塩気のない素材そのままの味なので、2歳が食べられるものが多いのも助かります。

別府地獄めぐりの筆頭。約98℃の熱湯が湧く、鮮やかなコバルトブルーの池です。何ができる?=湯気の向こうに広がる青い池をのぞく、温泉熱を使った温室で巨大なオオオニバス(夏〜秋)を見る、足湯で休憩、名物の温泉たまご。園内は庭園として整備されていて意外と歩きやすい。

海地獄から車で約10分。今度は真っ赤な池です。酸化鉄を含んだ熱泥が湧いていて、『豊後国風土記』にも記録が残る日本最古の天然地獄。何ができる?=赤と青を見比べる(子どもにはこの落差が効きます)、足湯、売店の地獄蒸しプリン。隣の龍巻地獄では約30〜40分おきの間欠泉も。
昼食のあとは無理をせず宿へ。別府は宿と観光地の距離が近いので、この「いったん帰る」が現実的にできるのが強みです。

鉄輪から車で約25分。野生のニホンザル1,000頭超が群れで暮らす山で、餌付け場(寄せ場)には柵がなく、サルが本当にすぐ足もとを歩いていきます。何ができる?=群れの毛づくろいや子ザルの取っ組み合いを至近距離で観察、係員による解説(ボスの名前まで教えてくれます)、山麓から寄せ場まではモノレール「さるっこレール」で登れます。

高崎山の道路をはさんだ真向かい(徒歩3分)。別府湾に面した水族館で、「動物とのふれあい」に振り切った構成が特徴です。何ができる?=セイウチやイルカのパフォーマンス、あそびーちでイルカが目の前まで来る、タッチプールでヒトデやナマコにさわる、屋外には水遊びできる場所も。
水族館から大分空港までは車で約1時間。空港内には足湯もあるので、最後にもう一度あたたまってから搭乗を。
💰 予算めやす:2泊3日で家族9〜16万円。2歳は膝上なら航空券がほぼかからず、施設もほぼ無料なので、費用はほぼ大人2人分です。圧縮のコツは①航空券を早割で押さえる(大分線は早期割引の効きが大きい)②レンタカーを借りず路線バス+タクシーで回る(別府市内なら十分成立)③夕食を地獄蒸しや駅前の食堂にして宿は素泊まり・朝食のみ。逆に紅葉ピークの週末は宿代が跳ねるので、平日ずらしが効きます。
観光地を巡らない、という選択。湯布院(由布院温泉)は、盆地のまんなかに由布岳がそびえ、朝には霧が湖から立ちのぼる、それだけで完成している場所です。宿から金鱗湖まで歩いて15分。1日に予定を1つだけ入れて、あとは温泉と昼寝にあてる——2歳連れがいちばん疲れない組み立てです。
大分空港から空港特急バスで約55分、乗り換えなしで由布院駅前に着きます。チェックインまで荷物を預けて、街へ。
由布院のシンボル。湖底から温泉と清水が同時に湧いているため水温が高く、これが朝霧の正体です。何ができる?=一周400mほどの遊歩道を散歩(10分で回れます)、湖面の鴨や鯉を見る、湖畔のカフェで休憩。由布院駅から湯の坪街道を通って徒歩約25分、ベビーカーでも行けます。

秋から冬にかけて、前夜がよく晴れて冷え込んだ朝に霧が出ます。湖面から湯気のように白い霧が立ちのぼり、由布岳がその上に浮かぶ——この景色のために泊まる価値があります。何ができる?=ただ立って見る、湖畔を一周する、朝いちの静けさのなかで写真を撮る。
由布院の宿は離れ+露天風呂つき客室や家族風呂を備えたところが多く、大浴場に子連れで入る気疲れがありません。何ができる?=好きな時間に何度も入る、部屋で昼寝、庭で落ち葉を拾う。予定を入れないことがこの日のメインです。

湯布院から車で約40分(バスなら約1時間)。地獄めぐりのひとつで、和風庭園のなかに青白い池があります。何ができる?=温泉熱を利用した熱帯魚館でピラルクーやピラニアを見る、庭を歩く。地獄めぐりのなかでいちばん静かで、庭園としての完成度が高い場所です。
別府から大分空港まで車・バスで約50分。空港の足湯で締めて帰ります。
💰 予算めやす:家族10〜22万円。宿のグレードで幅がいちばん大きいプランです。露天風呂つき客室は1泊3〜6万/室が相場感で、2泊のうち1泊だけ贅沢な宿、もう1泊は駅近の手頃な旅館という組み合わせにするとバランスが取れます。移動が空港バス往復(おとな1人 約3,300円めやす)で済むぶん、レンタカー代がかからないのは利点。紅葉シーズンの週末は早めに埋まるので、10月分は8月中の予約が安全です。
大分は温泉だけの県ではありません。北に耶馬渓の奇岩、中央にくじゅう連山と草原の高原道路。10月下旬なら、県内でいちばん早く色づく高地の紅葉に間に合います。車での移動が1回あたり1時間前後になるぶん、昼寝を車内に合わせられる家族向けの組み立てです。
大分空港でレンタカーを借りて、国東半島の海沿いを北上。海を見ながらのドライブで、そのまま子どもの昼寝時間に重ねられます。

江戸時代、旅人が命を落とす断崖を見かねた僧・禅海が、ノミと槌だけで30年かけて掘り抜いたトンネル。菊池寛『恩讐の彼方に』の舞台としても知られます。何ができる?=手掘りの跡が残る歩行者用の旧道を歩く(数分)、川沿いから対岸の競秀峰の岩壁を見上げる、駐車場前の広場で休憩。

青の洞門から車で約30分。群猿山・鳶ノ巣山など8つの奇岩を一度に見わたせることから一目八景。展望台は駐車場から徒歩3分ほどで、ぐるりと360度が岩と森です。何ができる?=展望台から岩峰を数える、渓流沿いを少し歩く、売店で名物のやまめの塩焼きやとり天。
山道を抜けて湯布院泊。ここを拠点にすると、翌日のくじゅう方面も帰路も無理がありません。
湯布院から車で約1時間。草原と山肌の間を縫って走る高原道路で、終点近くの牧ノ戸峠は標高1,330m。九州の道路の最高地点のひとつです。何ができる?=車窓からくじゅう連山の稜線を眺める、峠のレストハウスで休憩、駐車場すぐの展望台まで数分だけ登る(本格的な登山道には入らない前提で)。
牧ノ戸峠から車で約30分。長さ390m・高さ173m、人が歩く吊橋としては日本最大級。何ができる?=橋の上から日本の滝百選「震動の滝」と、紅葉に染まる鳴子川渓谷を見下ろす。渡り切って戻ると往復20〜30分ほど。

大吊橋から車で約40分。久住高原(標高約850m)に広がる広大な花公園で、秋はコスモスとサルビアが見頃(例年9月中旬〜10月下旬めやす)。何ができる?=花畑のあいだの道を思いきり走る、くじゅう連山を背にした写真を撮る、園内のジェラート・パン工房で休憩。
山道は日が落ちると一気に暗くなるので、16時台には下り始めるのが安心です。
最終日は動かない日に。朝の金鱗湖を歩いて、湯の坪街道で買い物をして、湯布院から車で約55分の大分空港へ。
💰 予算めやす:家族11〜20万円。A・Bと比べてレンタカー代(コンパクトカー2日+チャイルドシートで1.2〜2万円めやす)が上乗せになりますが、そのぶん入場料が安い場所ばかりなので総額の差は大きくありません。圧縮のコツは①宿を2連泊の同一宿にして連泊割を使う②高速をあまり使わない一般道ルートで組む③昼食を道の駅や高原のパン工房にする。紅葉ピークの土日は大吊橋の駐車場が満車になりやすいので、平日か早朝着を強くおすすめします。金額は時期・為替・燃料価格で動きます。
10月の大分は、まず移動が短くて温泉に何度も戻れるAがいちばん失敗しません。地獄めぐり・高崎山・うみたまごが車で20分圏に収まり、13時からのお昼寝を宿で取れる——この一点が2歳連れの旅の成否を分けます。とにかく疲れたくないならB・湯布院(朝霧は泊まった人だけの景色)、紅葉と絶景を優先するならC・やまなみドライブ。行くなら10月中旬〜下旬、台風シーズンを抜けて高原が色づく、いちばん短い当たりの週です。