果物、芋煮、湯けむり。山形の秋は、食べて浸かって、ただ歩くだけで満ちてくる。飛行機に乗らず、乗り換えもなく着けるのが、2歳連れにはなにより効きます。
東京駅から山形新幹線に乗ってしまえば、あとは座っているだけ。乗り換えなしで山形駅に着くころには、車窓はもう果樹園と山ばかりになっています。2歳の子は、たいていこのあたりで一度寝ます。荷物を抱えて空港を移動する必要がない——それだけで、旅のハードルがぐっと下がる。
9月から10月の山形は、県じゅうが食べものの季節です。ぶどうが終わればラ・フランス、川原には芋煮の鍋が並び、リンゴが赤くなる。温泉街の夕方は少し肌寒くて、湯上がりに羽織るものが気持ちいい、あのちょうどいい気温。
子連れ目線でありがたいのは、山形が「詰め込まなくても成立する」旅先だということ。果樹園でぶどうを1房もいで、川原で芋煮をひとくち、宿の湯につかって早めに寝る。それだけで十分、いい2泊になります。
山形の秋は「果物のリレー」が続きます。9月はぶどう(デラウェア〜ピオーネ)、10月はラ・フランスとリンゴで、狩り体験ができる観光果樹園がいちばん賑わうのがまさにこの時期。さらに9月の日曜には山形市の馬見ヶ崎川原で「日本一の芋煮会フェスティバル」が開かれ、直径6mの大鍋が名物です(毎年9月開催・日程は公式で要確認)。気温も日中20℃台とおだやかで、真夏の暑さも冬の雪もなく、ベビーカーで歩ける数少ない“ちょうどいい季節”。紅葉は蔵王など高い場所で10月中旬から色づきはじめます。
山形駅を起点に、車で30〜40分の範囲だけで回るプラン。硫黄の香る蔵王温泉に2泊して、午前だけ出かけて午後は宿でのんびり、というリズムが組めます。秋の味覚がいちばん集まるエリアでもあります。
山形新幹線つばさで乗り換えなし。指定席をとって、おやつと小さいおもちゃがあれば2歳でも十分もちます。山形駅でレンタカーを借りるか、蔵王温泉行きのバス(約40分)へ。

芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蟬の声」を詠んだ古刹。奥之院までは1015段の石段で2歳連れには現実的ではありませんが、ふもとの根本中堂・日枝神社まわりと門前町だけでも十分に旅気分。名物の力こんにゃく(1本100円ほど)を食べ、参道の店をひやかして、岩山を見上げて帰ります。(山形駅から車で約25分)
山寺から車で約50分、山形駅からなら約40分の登り道。乳白色の硫黄泉で、湯船に入った瞬間に「温泉に来た」とわかる濃さです。夕食は山形牛か、宿の会席で。

温泉街から歩ける山麓駅から、ゴンドラで一気に標高1300mへ。樹氷高原駅までの片道7分で、眼下に紅葉のはじまった斜面が広がります。10月中旬〜下旬が色づきのピーク。子どもは「ゴンドラに乗った」だけで大満足なので、上の駅で景色を見てソフトクリームを食べて降りてくる、で十分。
体力と天気に余裕があれば、車で蔵王ハイラインを上って「お釜」(写真)へ。駐車場から火口湖の展望台まで徒歩5〜10分で、エメラルド色の水面が見られます(山頂は10℃前後まで下がるので上着必須)。

山形の秋といえば芋煮。里芋・牛肉・こんにゃく・ねぎを醤油と砂糖で煮る、山形内陸の郷土鍋です。9月の第1日曜あたりに開かれる日本一の芋煮会フェスティバルでは直径6mの大鍋が登場し、重機で具材を投入・攪拌する光景そのものが見もの(写真)。時期が合わなければ、市内の芋煮を出す店や河川敷の芋煮セット貸出でも味わえます。(蔵王温泉から車で約35分)
山形市南部から上山、天童・東根にかけて観光果樹園が点在します。9月はぶどう(デラウェア、ピオーネ、シャインマスカット)、10月中旬からはラ・フランスとリンゴ。ハサミで1房切る体験は、2歳がいちばん夢中になる時間です。

かみのやま温泉の街を見下ろす高台に建つ城(現在は郷土資料館)。最上階の展望室からは蔵王連峰と上山の街並みが一望でき、晴れた日は気持ちがいい。ふもとには足湯が点在し、武家屋敷通りには茅葺きの屋敷が4軒残ります。(蔵王温泉から車で約40分、山形駅から約25分)
駅で玉こんにゃく、だだちゃ豆、山形の日本酒などを買って新幹線へ。帰りも乗り換えなしで約2時間半。
💰 圧縮のコツ:新幹線+宿の「Wきっぷ・びゅうパッケージ」型の旅行商品にすると往復と宿で1〜2万円ほど下がることが多い。2歳は新幹線の運賃・特急料金とも無料(膝上)、宿も「添い寝・食事なし無料」プランを選べる宿が多く、実質おとな2名分で組めます。レンタカーを使わずバス移動にすればさらに1万円前後の節約に。料金は時期と宿で変わるので予約時に確認を。
木造多層の旅館が川の両岸に並ぶ銀山温泉に泊まる、写真映えするプラン。歩く距離は短く、温泉街そのものが目的地なので、2歳のペースでも成立します。行き帰りに天童でひと遊び。
山形新幹線で乗り換えなし。天童でレンタカーを借りると、この先の行程がぐっと楽になります。

将棋駒の生産で全国シェア9割超を占める町。駅前や街角に巨大な将棋駒のモニュメントが立ち、駒の絵付け体験ができる工房もあります(所要30分ほど・要予約の店が多い)。名物は鳥中華と、天童のラ・フランス。

天童から車で約1時間10分。川沿いに200mほどの温泉街が続くだけの、とても小さな湯の里です。日暮れにガス灯がともる30分がこの旅のハイライトで、それを落ち着いて見られるのは泊まった人だけ。無料の足湯や、共同浴場もあります。宿の夕食では尾花沢牛が定番。

温泉街の突き当たりにある落差22mの滝。宿から徒歩5〜10分で着き、滝つぼの近くまで下りられます。水音と水しぶきは、2歳がいちばん反応する種類の景色。さらに奥へ進むと洗心峡の遊歩道や、江戸期の銀鉱洞(銀山抗道)が続きますが、階段が急なので無理は禁物。
車で約30分の大石田は、最上川沿いの「そば街道」で知られる町。太くて黒い田舎そばを、板そばとして大皿で食べます。午後は温泉街に戻って、昼寝と湯を交互に。
銀山温泉から車で約1時間、天童・東根エリアへ。10月中旬からはラ・フランスとリンゴが主役です(ラ・フランスは追熟が必要なので、その場で食べるより「もいで持ち帰る」体験が中心の園も)。
レンタカーを返して新幹線へ。約3時間で東京着。
💰 圧縮のコツ:銀山温泉は部屋数が少なく相場が高め&予約が取りにくい(週末は数か月前から埋まります)。銀山1泊+天童温泉1泊に分けると3〜4万円下がり、予約も取りやすい。平日泊なら同じ宿で2割前後安くなることも。金額は時期・宿で大きく変わるので予約時に確認を。
日本海側の庄内地方へ。世界最多のクラゲ展示で知られる加茂水族館を核に、羽黒山の五重塔、酒田の山居倉庫を回ります。屋内の見どころが多く、天気に左右されにくいのが強み。
羽田から庄内空港まで飛行機で約1時間、1日4便前後。空港から鶴岡市街まで車で約25分です。陸路なら東京→新潟→特急いなほで約4時間半。2歳連れなら断然、飛行機が楽。

一度は閉館寸前まで追い込まれ、クラゲ展示に賭けて復活した水族館。クラゲの展示種類数は世界一で、フィナーレは直径5mの大水槽「クラゲドリームシアター」に約1万匹のミズクラゲが漂います。ほかにアシカ・アザラシのショー、庄内の淡水魚・海水魚の展示、名物のクラゲアイスも。(庄内空港から車で約30分)
水族館から車で約10分。日本海に面した砂浜沿いに宿が並び、部屋や大浴場から水平線に沈む夕日が見られます。夕食は庄内浜の魚と新米で。

出羽三山のひとつ、羽黒山。随神門から下って徒歩約10分のところに、樹齢数百年の杉並木に囲まれた国宝・五重塔が立ちます。約600年前の建立で、塗装のない素木のまま。頂上の三神合祭殿までは2446段の石段ですが、車で山頂まで上がれる有料道路があるので、2歳連れはそちらで。(湯野浜温泉から車で約45分)

明治期に建てられた米の保管倉庫が、黒板塀とケヤキ並木とともに残る酒田の象徴。倉庫の裏手のケヤキ並木は、夏の日よけと冬の風よけのために植えられたもので、写真スポットとして有名です。周辺には物産館やカフェも。(羽黒山から車で約50分)
港に隣接する市場の2階食堂などで、庄内浜の海鮮丼を。秋は甘えび、秋鮭、そしてハタハタが出はじめる頃。宿に戻って温泉と昼寝。
庄内藩の城跡が公園になっていて、明治期の洋風建築(旧西田川郡役所など)が移築された致道博物館が隣接。芝生と堀のある広い公園なので、最後は子どもを走らせて終わりにできます。
空港まで鶴岡市街から車で約25分。飛行機で約1時間、あっという間に東京です。
💰 圧縮のコツ:庄内空港便は早期割引(21日前・28日前)で片道1万円前後まで下がることがあり、ここが最大の変動要因。宿を鶴岡市街のホテルにすれば2泊で3万円ほど圧縮できます。3歳未満は航空券・入館料ともほぼ無料。金額は時期と予約時期で大きく動くので、必ず予約時に確認を。
9〜10月の山形は、芋煮と果物狩りという「その季節にしかできないこと」が半径30分圏に集まります。移動が短く、午前だけ出かけて午後は温泉、というリズムが2歳にちょうどいい。写真と雰囲気を優先するなら「B・銀山温泉」(ただし予約は早めに)、天気が読めない・確実に楽しみたいなら「C・庄内のクラゲ水族館」。3つとも、東京から乗り換えなしか1時間の空路で着けるのが山形のいいところです。