羽田から1時間半。出雲大社の大しめ縄、日本海に沈む夕日、鳥にさわれる温室、しじみ汁と新そば。人が少なくて、歩きやすくて、写真がきれい。2歳と歩く秋の島根です。
旧暦の10月は、全国では「神無月」。ところが出雲だけは「神在月」と呼ばれます。八百万の神さまが出雲に集まってしまうから、よその国から神さまがいなくなる——そういう言い伝えです(実際の神在祭は旧暦なので新暦だと11月下旬あたり)。理屈はさておき、日本中の神さまがわざわざ集まる場所、というだけで、なんだか行ってみたくなりませんか。
その神さまが上陸するとされるのが、稲佐の浜。遠浅の砂浜にぽつんと弁天島が立っていて、夕方になると日本海に太陽がじゅわっと落ちていきます。9〜10月なら日没は18時前後。2歳を寝かしつける前の、ちょうどいい時間です。砂の上をよちよち歩いて、貝殻をひろって、波打ちぎわで足だけ濡らして、それでもう十分満足そうな顔をする。
島根のいいところは、混んでいないこと。出雲大社も松江城も、9月の平日ならベビーカーで悠々と歩けます。そして食べものが安定しておいしい。宍道湖のしじみ汁、秋に出まわる新そばの出雲そば(三段の割子で出てくるやつ)、日本海の魚。子どもはしじみ汁のごはんかけで勝手に完食します。
島根の秋は「歩けること」がいちばんの価値です。8月は日中30℃超えでベビーカー移動がつらいですが、9月後半〜10月は平均最高気温が20℃台前半まで落ち、出雲大社の長い参道も石見銀山の町並みも、2歳と一緒に無理なく歩けます。梅雨や台風のピークも抜けて晴天率が上がる時期。
食では秋そば(新そば)が9月下旬〜11月に出まわり、出雲そばがいちばんおいしい季節。宍道湖のしじみも秋が身の入る時期です。さらに日没が18時前後になるので、稲佐の浜や宍道湖の夕日を「子どもが寝る前」に見られるのがこの時期の隠れた利点(真夏は19時過ぎで間に合いません)。
そして旧暦10月=神在月という物語がのっている月でもあります。行事そのものは新暦の11月下旬ですが、「神々が集う国」の空気を、混雑の少ない秋の入口に味わうのがいちばん贅沢です。
出雲大社を中心に、車で5〜20分の範囲だけで完結するプラン。空港から大社まで連絡バスで約35分と近く、初日から動けます。神社・海・灯台と景色がころころ変わるので、子どもも飽きません。
羽田から直行便で約1時間30分。空港から出雲大社までは連絡バスで約35分(レンタカーなら約30分)。荷物を宿に預けて、午後の門前さんぽへ。
大鳥居から大社の入口まで約700m続く石畳の通り。出雲そばの店、ぜんざい屋、コーヒースタンド、雑貨店が軒を連ねます。何ができる?=食べ歩き、おみやげ探し、まずは雰囲気に慣れる。
縁結びの神さま・大国主大神をまつる、日本最古級の神社のひとつ。何ができる?=日本でめずらしい下り参道を歩き、松並木を抜けて拝殿へ。参拝は「二礼四拍手一礼」と、他の神社と作法が違うのが子どもにも説明しやすいポイントです。隣の神楽殿には長さ約13m・重さ5トン超の大しめ縄がかかっていて、実物を見ると2歳でも「おっきい」と声が出ます。
日本三大そばのひとつ。丸い漆器(割子)が三段重ねで出てきて、上の段から順につゆをかけて食べます。何ができる?=そばの実を殻ごと挽く「挽きぐるみ」の黒くて香りの濃いそばを、秋なら新そばで。
いったん宿に戻って昼寝。夕方の稲佐の浜にそなえて体力を回復させます。
出雲大社から車で約5分(徒歩なら約15分)。神在月に八百万の神々が上陸するとされる浜で、砂浜の真ん中に弁天島という岩の島が立っています。何ができる?=砂遊び、貝殻ひろい、波打ちぎわを歩く、そして日本海に沈む夕日。

出雲大社から車で約20分、断崖の上に立つ白い灯台。石造の灯台としては日本一の高さ(約44m)で、明治36年から現役です。何ができる?=灯台まわりの遊歩道さんぽ、日本海と断崖のパノラマ、海鳥ウォッチング。近くには朱塗りが美しい日御碕神社もあります。
日御碕から空港までは車で約50分。空港の売店で出雲そば・しじみ・ぜんざいのおみやげを最後に。
💰 予算めやす:合計10〜17万円(時期・宿のグレードで大きく変動)。圧縮のコツ=①航空券は早割(JALの先得系)を2〜3か月前におさえる ②宿は門前の旅館ではなく出雲市駅前のホテルにして食事は外で ③レンタカーを軽自動車に。逆に旅館の夕食つきにすると1泊あたり+1.5〜2万です。連休・年末年始は航空券も宿も大きく上振れします。
出雲より東、宍道湖のほとりの城下町・松江を拠点にするプラン。屋内施設が多いので雨の日でも計画が崩れません。舟に乗る・鳥にさわる・庭を眺めると体験の種類がばらけていて、2歳が退屈しにくいのが特長です。

空港から車で約20分、宍道湖を見おろす丘に建つ「花と鳥の楽園」。何ができる?=天井から吊るされたベゴニア・フクシアの巨大な花のカーテンを歩く、ペンギンのお散歩を間近で見る、フクロウやタカの飛行ショー、そしてオオハシやペンギンに直接エサをあげる体験。

日本有数の夕日スポット。湖の西側に嫁ヶ島という小さな島が浮かび、その向こうに太陽が沈みます。何ができる?=湖岸の遊歩道を散歩しながら夕日を見る。フォーゲルパークから車で約20分で市街地側の湖岸へ。

松江城のお堀を、小さな屋根つきの舟でぐるりと一周する遊覧船(約50分)。何ができる?=船頭さんの語りを聞きながら、武家屋敷や石垣を水面から眺める。名物は低い橋をくぐるとき、船の屋根が油圧でぐーっと下がって全員で頭を下げる瞬間。ここで毎回、子どもがいちばん笑います。
現存12天守のひとつで、国宝。黒い下見板張りの重厚な姿から「千鳥城」とも呼ばれます。何ができる?=天守最上階から松江の街と宍道湖を一望、城山公園を散歩。
玉造温泉なら松江城から車で約20分。午後は宿に戻ってお昼寝、起きたら温泉へ。

松江から車で約40分。横山大観のコレクションで知られる美術館ですが、真の主役は庭園。米国の専門誌の日本庭園ランキングで20年以上連続1位に選ばれ続けています。何ができる?=窓枠を額縁に見立てて庭を「絵」として眺める、5万坪の白砂青松庭・枯山水庭をガラス越しに歩く。
足立美術館から出雲縁結び空港までは車で約1時間10分。米子鬼太郎空港(車で約50分)を使う手もあります。
💰 予算めやす:温泉旅館に2泊するとこのプランがいちばん高くなります(13〜21万円)。圧縮のコツ=①温泉旅館は1泊だけにして、もう1泊は松江駅前のホテル(差額で1.5〜3万下がります) ②夕食つきを1泊だけにする ③レンタカーではなく市内は「ぐるっと松江レイクライン」バス+堀川めぐりで回る。料金・営業時間は時期で変わるので予約前に各公式で確認を。
島根県西部=石見(いわみ)エリアへ。人がぐっと少なくなり、世界遺産の町並みと、日本海の水族館と、1300年続く温泉が並びます。移動距離は長めですが、その分「他の人が行っていない場所に来た」感がいちばん強いプランです。
出雲縁結び空港から車で約1時間40分。中国地方最大級の水族館で、名物はシロイルカ(ベルーガ)が水中で輪っかを吹く「幸せのバブルリング」。何ができる?=バブルリングのパフォーマンス、ペンギン館、日本海の魚たち、アシカ・アザラシ。
2007年に世界遺産に登録された石見銀山遺跡の中心にある、江戸期の町並みがそのまま残る集落。何ができる?=武家屋敷や商家(熊谷家住宅)の見学、細い通りの散策、古民家をつかったパン屋・カフェ・雑貨店めぐり。全長約800mほどで、のんびり歩いて往復1時間半。

「間歩」とは銀を掘った坑道のこと。石見銀山には600以上あり、そのうち常時公開されている代表格がここ。大森の町並みから徒歩約40分(レンタサイクルなら約15分)。何ができる?=江戸時代のノミの跡が壁にそのまま残る坑道を、約160m歩いて通り抜ける。ひんやりした空気と手掘りの跡が、当時の労働をなまなましく伝えます。
大森から温泉津温泉までは車で約25分。午後は宿でゆっくり。

石見銀山で採れた銀を積み出した港町であり、1300年の歴史をもつ温泉地。温泉街として全国で唯一、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。何ができる?=木造の旅館が並ぶ細い通りの散策、共同浴場「元湯 泉薬湯」「薬師湯」での湯めぐり、港の散歩。
温泉津から出雲縁結び空港までは車で約1時間20分。萩・石見空港(車で約1時間20分)から羽田に戻るルートもあり、行き=出雲/帰り=石見のオープンジョーにすると移動がぐっと減ります。
💰 予算めやす:宿代・食事代が県東部より安く、10〜18万円とAプランと同水準におさまります。注意点=このプランはレンタカーがほぼ必須(公共交通が少ない)。圧縮のコツ=①帰りを萩・石見空港にして移動時間と燃料を削る ②宿は温泉旅館1泊+浜田市街のホテル1泊に分ける。料金・営業時間は時期で変動するため、予約前に各公式で確認を。
秋の島根でいちばん贅沢なのは、18時前後に沈む稲佐の浜の夕日です。真夏は日没が19時を過ぎて子どもの就寝に間に合いませんが、9〜10月ならお昼寝のあとにゆっくり出かけて、暗くなる前に宿へ戻れます。移動も少なく、新そばの季節でごはんもおいしい。天気が読めない日程なら「B・松江」(屋内施設だけで組み直せます)、混雑を避けて遠くまで行きたいなら「C・石見」を。