湖の色が五つに変わる沼、茅葺き屋根がならぶ峠の宿場、常夏のプール。東京から思いのほか近いのに、着いた瞬間に空気が変わる。2歳と歩くには、ちょうどいい距離の秋です。
東京駅で新幹線に乗って、駅弁を半分ほど食べ終わったころにはもう郡山。トンネルを抜けると空が高くて、山の稜線がくっきり見える。夏のあいだ白くぼやけていた景色が、9月をすぎると急に輪郭を取り戻します。
裏磐梯の五色沼は、ほんとうに沼ごとに色がちがう。エメラルドだったり、青緑だったり。「あお!」と指をさす2歳のとなりで、大人のほうが黙って見入ってしまう。歩けるところだけ歩いて、飽きたら抱っこ。それでじゅうぶん元が取れる景色です。
会津へ下りれば、赤瓦の鶴ヶ城と、峠の上にぽつんと残る茅葺きの集落。海のほうへ回れば、水族館と、雪が降っても入れる常夏のプール。ひとつの県のなかに、まったく違う3つの秋があります。
9〜10月の福島は、一年でいちばん空気が澄む季節です。梅雨と台風の主シーズンを抜け、猛暑もやわらぐので、標高の高い裏磐梯(約800m)は日中20℃前後と歩きやすい。紅葉は標高の高い裏磐梯・磐梯吾妻エリアが10月上旬〜中旬、会津の城下町や大内宿が10月下旬〜11月上旬と、山から里へ順に下りてきます。つまり10月なら、どこかしらが見頃。夏休みの混雑と料金のピークも過ぎていて、子連れには動きやすいタイミングです。9月上旬はまだ残暑が残るので、涼しさ重視なら9月下旬以降が安心。ただし高原は朝晩10℃近くまで下がるので、上に1枚は必ず。
郡山から車で1時間圏に、五色沼・猪苗代湖・磐梯山がまとまっています。移動が短いぶん、子どものお昼寝リズムを崩さずに絶景をはしごできるのがこのエリアの強み。ベビーカーで歩ける平坦な区間も多く、はじめての秋旅行に向きます。
東北新幹線「やまびこ」で郡山まで約1時間20分。駅前でレンタカーを借りて、猪苗代方面へ(車で約40分)。午前中に動き出せば、初日から半日たっぷり遊べます。

湖なのに砂浜がある、遠浅の湖岸。何ができる?=砂遊び、水ぎわのぱしゃぱしゃ、白鳥型の遊覧船(はくちょう丸・かめ丸)に乗船。秋は水に入るには冷たいので、砂遊びと船が主役になります。
猪苗代・磐梯エリアの温泉宿へ。初日は無理せず、早めにお風呂と夕食を。
宿から車で約30分。五色沼湖沼群のうち最大の毘沙門沼は、駐車場からすぐ。何ができる?=水の色を見る、手こぎボートに乗る(時期・天候による)、鯉さがし。探勝路(全長約3.6km)を端から端まで歩くと1時間強かかるので、2歳連れは毘沙門沼の周辺だけで切り上げるのが正解です。

裏磐梯と猪苗代を結ぶ全長約17kmの山岳道路(車で約30分)。何ができる?=車窓からの紅葉、展望台で猪苗代湖を見下ろす、「山湖台」など数か所の駐車スペースで写真。降りずに車内で完結できるのが子連れには有難いところ。
ソフトクリームと、地元の野菜・りんご。2日目の午後は予定を入れず、宿に早めに戻って温泉が正解です。
チェックアウトまでゆっくりして、郡山へ(車で約40分)。駅で会津の地酒や薄皮饅頭を買って新幹線へ。
💰 圧縮のコツ:新幹線+宿+レンタカーのJR東日本のダイナミックレールパックなど宿泊パックにすると、単品合計より1〜2万安くなることが多い。宿は1泊2食つきを選ぶと外食代が読める。紅葉ピーク(10月中旬の週末)は宿代が跳ねるので、平日か9月下旬にずらすと同じ宿でも数万円変わります。
日本で唯一の赤瓦の天守・鶴ヶ城と、江戸時代の街並みがそのまま残る大内宿。歴史好きの大人が満足しつつ、子どもは芝生と川と団子で満足する——という珍しい両立ができるエリアです。宿は東山温泉か芦ノ牧温泉に取ります。
新幹線で郡山(約1時間20分)、磐越西線に乗り換えて会津若松へ(約1時間10分)。車なら郡山から磐越道で約1時間。レンタカーは会津若松駅で借りると、翌日の南会津がスムーズです。

日本で唯一、屋根が赤瓦の天守。何ができる?=天守の展望層から会津盆地を一望、本丸の広い芝生で走り回る、茶室「麟閣」で抹茶とお菓子。天守内は展示中心なので、子どもは外の芝生と石垣のほうが盛り上がります。
会津若松の市街から車で約15分の東山温泉、または約30分の芦ノ牧温泉へ。どちらも渓谷沿いで、露天から紅葉が見えます。

宿から車で約1時間。江戸時代の宿場がそのまま残る集落で、国の重要伝統的建造物群保存地区。何ができる?=約450mの一本道を端まで歩く、名物のねぎ一本で食べる「ねぎそば」、栃餅や岩魚の塩焼き、高台の見晴台から集落を見下ろす。
大内宿から車で約20分。100万年かけて川が削った断崖が塔のように並ぶ国の天然記念物。「へつり」は会津の言葉で「険しい崖」。何ができる?=吊り橋を渡って対岸へ、川の色と紅葉のコントラストを見る、崖沿いの小さな祠まで歩く。
移動が多い日なので、夕方には宿へ。渓谷の露天風呂で締めます。
大正ロマン風の建物が並ぶ通りで、会津木綿や赤べこの絵付け、輪箱飯(わっぱめし)のランチ。舗装された平坦な通りなので、ここはベビーカーが使えます。おみやげを買って帰路へ。
💰 圧縮のコツ:宿代の振れ幅がいちばん大きいプラン。1泊を温泉旅館、もう1泊を市街のビジネスホテルにすると2〜3万下がり、七日町の外食も楽しめます。会津若松市内だけなら「まちなか周遊バス(ハイカラさん・あかべぇ)」で車なしも可能ですが、大内宿へ行くならレンタカーが現実的。紅葉ピークの土曜泊は最も高いので、金曜か日曜泊へ。
秋の旅で唯一こわいのが雨。このプランはそれを丸ごと無効化します。上野から特急で約2時間15分のいわきは、水族館も巨大な屋内プールも「屋根の下」。乗り換えも少なく、2歳連れの移動負荷がいちばん軽い組み立てです。
常磐線の特急「ひたち」で乗り換えなし。品川・東京からも直通です。いわき駅からハワイアンズまでは無料送迎バスがあり、車がなくても完結します。
巨大なドームの中が一年中28℃前後に保たれた、日本最大級の屋内プール施設。何ができる?=浅い子ども用プールで水遊び、温泉大浴場、夜のフラダンスとポリネシアンショー。館内はほぼ水着かバスローブで移動でき、着替えの往復が少ないのが助かります。
ハワイアンズから車で約35分、小名浜港へ。全面ガラス張りの「環境水族館」。何ができる?=黒潮と親潮がぶつかる「潮目の海」の三角トンネル、サンマやカツオの群れ、屋外の「蛇の目ビーチ」で裸足になって魚やカニにさわる、金魚館でカラフルな金魚。

同じ敷地内の別館。何ができる?=金魚をじっくり見る、体験施設「アクアマリンえっぐ」で生きものにふれる、隣接する「イオンモールいわき小名浜」でランチと休憩。雨でも屋根づたいに動けます。
いわきから車で約1時間10分、帰り道の田村市にある鍾乳洞。何ができる?=約600mの一般コースを歩く、ライトアップされた「滝根御殿」の巨大な空間を見上げる。ここから郡山経由で新幹線に乗る帰り方もできます。
車なしなら、午前中もう一度プールに入ってから特急で帰るのがラク。乗り換えなしで上野・東京まで一本です。
💰 圧縮のコツ:ハワイアンズは宿泊者はプール入場料が込みなので、日帰り+別宿より結果的に安くなることが多い。えきねっとの「トクだ値」で特急券が3〜4割引になる日があります。土日祝と連休はプールが混むので、可能なら平日へ。車を使わないぶん、3プランでいちばん総額が読みやすいのがこのプランです。
10月の福島でしか見られない景色が、いちばん少ない移動距離で手に入るからです。毘沙門沼は駐車場から数分、ゴールドラインは車に乗ったまま。2歳が歩ける距離と、大人が見たい景色の折り合いが、このエリアだと自然につきます。街歩きと温泉旅館を味わうなら「B・会津と大内宿」、雨でも寒くても確実に遊ばせたいなら「C・いわき」。迷ったら天気予報を見て、崩れそうならCに振り替えられるのも、福島が一つの県で3つの顔を持っているおかげです。